古文書でお手紙書いたら、古文書で返事が来た

手紙の写真

 高橋ホイコです。国立公文書館のツイート好きです。
 東海道中膝栗毛って有名じゃないですか。ヤジさんキタさんの楽しい旅行記です。だがしかし、あれの全文を読んだことある人いますか?
 探したけれどもこの本、なかなか見つからないのです。いや、ただ、電子書籍を探したからなかっただけかもしれないけど、とりあえず、私が探しているときには見つからなかったのです。
 ところが、ある日、Amazonが古い本を無料で大放出するキャンペーンをやってまして、Kindle用の無料の「東海道中膝栗毛」を見つけたのです!(この記事の執筆時点は有料になってました)

 いやっほーい!ってダウンロードしたら、字が読めない。びっくりするほど、何が書いてあるのかわからない。古語ってやつです。あのにょろにょろした謎の日本語です。日本人なんだから少しは読めるかと思ったけど、びっくり。本当に読めない。
 読めるわけないわー!ってKindle投げそうになりましたけどね、私も良識ある大人です。これは、勉強して読めるようになってやろうと。そしてさらには、博物館とか行ったときに、にょろにょろ文字を指さして、偉そうに「あ、これ、こう書いてあるねー」とかドヤ顔で言ってやろうと思ったのです。

 そんなわけで、古文書の読み方の本を買ったのですが、これが、やっぱり、さっぱりわからない。本が悪いんじゃないかと、もう一冊買ったけど、やっぱり、さっぱりわからない。
 このままでは、買った本がもったいないので、古文書でお手紙を送りつけることにしました。こんなことにつきあってくれた後輩ちゃん、本当にありがとう。

古文書のここが難しい

古文書解説本
 古文書を読むには、崩し字を読めるようになることと、候文(そうろうぶん)を読める必要があります。候文というのは、たとえば「御座候」、これは「ござそうろう」と読み「~でございます」という意味だそうです。こういった多数の古い言葉を知る必要があります。崩し字が読めたとしても、御座候の意味がわからなければ、文章は理解できないのです。
 私はこの時点で脱落しました。はい。
崩し字
 教科書には崩し字一覧が載っています。この漢字は、こんな風に崩されて書かれていますよという一覧です。ただ、ただ、これを見ながらお手紙を書きました。ちょっとだけ、候文ぽくもしました。書いてあった例文をつぎはぎしながら書いています。
古文書で書いたお手紙
 凡人にはトマトマンから手紙が来たことしか、わからない手紙。完成。

お返事が来た

 お手紙を送った相手は、日本文学を専攻した女子。にょろにょろ文が読めるらしいのです。果たして私が適当に書いた古文書は伝わるのでしょうか。私が出演する演奏会に来てくれたので、そこで渡しました。渡した当日は「冒頭の『本日』くらいしか読めない。」と言っていたのですが…翌日、返事が来ました。
返事
 やばい。わからない。
 返事いただきましたが「さっきの手紙のご用事なあに?」って電話しそうなレベルです。

解読は難航

 ちなみに、私が送ったの手紙の内容は、こういったものでした。

本日難有奉存候
ブログにしたいので
返事奉上願

 読み方としては「ほんじつ、ありがたくぞんじたてまつりそうろう ブログにしたいので へんじ、ねがいあげたてまつる」となります。私としては「今日はありがとう。ブログにしたいから返事ちょーだい。」と書いたつもりです。あっているかは知りません。今、改めて見たら、明らかに返事の返を「変」に書き間違えてます。バカですね。
 もちろん、ブログなんて言葉は当時にないです。なので、平仮名というか漢字の当て字で「不呂久」と書いています。暴走族っぽい。
古文書で書いたお手紙
 そして、返事を眺めます。古文書と言えども日本人。3分も眺めていれば読めてくるんじゃないかと思うのです。3分後、見えてきましたよ。
返事

ひつまぶし食ってもハツエ
これは久々ひえーふしぎつぼひええ
ほなっーと
われやよろしく川たぬ

 「ひええー。」が気に入りましたけど。「ひええー。」がすこぶる気に入りましたけど。まったく意味はわからないですね。暗号ですね。

読み方を教えてもらいました

 後輩ちゃんのメールには、読み方も書いてありました。

いとむしかつしうてはへり
てかみくらひてしまひけり
あなかしこ
われやきとしていきぬ

 そう読むのか。おや。「ひええー」がないではないですか。
 しかし、文字がわかっても、意味がわからないという。これが、古文書の困るところです。それでも日本人なので、3分も眺めていればきっとわかると思うのです。必死に考えました。

  • 「いと」はとてもですね。「むしかつ」?平安時代に流行ったカツかなんかでしょうか。それをしているのは、絵里さん?え、なんで急に絵里さん?
  • 「てかみくらひてしまいけり」ということは、手紙から何かをくらったと?ラリアットでもされたのでしょうか。
  • 「あなかしこ」と。もうね、飛行機乗って逃げたんですね。かしこみ、かしこみー。
  • 「われやきとしていきぬ」ということは、ところがどっこい、焼かれてしまったそうです。

 これをまとめると、こうなります。

 「とても蒸しカツ作りが上手な絵里さんが、手紙を持ってきてくれたのですが、ラリアットされました。怖いのでANAで遠くまで逃げましたが、ワレワレ!と焼かれてしまいました。」

 ええええええええ。怖いよ。怖いよ。おとぎ話級にこわいよ。後輩ちゃん、今どこにいるのよ。しかも、絵里さん、空飛んで追いかけてきちゃったよ。ってか、何の話だよ。絵里って誰だよ。

和訳も送ってくれました

 後輩ちゃん、和訳も送ってくれました。親切。

とっても(読むのが)難しかったです
手紙を食べてしまいました
ああ、恐れ多いことだ
きっと私はヤギとして生きるのであろう

 なるほど、そういう意味だったのか。冒険活劇が書かれていたわけではないようです。ヤギとして生きているなら「ご用事なあに?」って電話して良かったんだと。たしか平家物語が専門だったと言っていたので、平安貴族の手紙のようです。手紙が難しいって言いたいだけならそれだけ言ってればいいのに、極端な比喩を駆使して絶望っぷりを大袈裟に表現しちゃうところが平安貴族っぽい。私が送ったのはおそらく江戸言葉に近いので、江戸のサムライが平安貴族に手紙を送るファンタジーを再現できました(勝手に満足)。
 ちなみに、後輩ちゃんが言うには「『むしかしうて』は古語文法的には『むつかしうて』が正しいですね。書き間違えちゃいました(´・Д・)。」だそうです。平安貴族かわいい。正直、私には「むしかしうて」と「むつかしうて」の違いを発見するのに5分かかったわけだけど。やっぱり、女子的には書けるようになるなら、平安貴族の手紙を書けるようになりたい。

いとむつかしうー

 本当にむずかしい古文書。現在、古文書に興味を示している私ですが、学生時代、古文との相性は最悪でした。
 模試で漢文を読んでいて、それが、すごいおもしろい話だったんです。たしか、孔子的な偉い人が、メロンパンを落として、そのメロンパンを巡って大騒動が起きる話。そのメロンパン食べると賢くなるとかで弟子の間で奪い合いですよ。しかーし、実はそのメロンパン、孔子が落としたものじゃない。殿だけがそれを知っていると。なかなか熱い話だったなーと、自信満々でテストを終えたわけです。
 試験後配られた解答を読んだら、すこぶるつまらない話なのね。全然、面白くないの。オチもないし、説教くさい。私の作った話の方が断然おもしろい。と思ったわけです。当然、テストは1問も正解せず。
 そんなことを思い出しました。
 ワッホイ、ワッホイ。