一年かけて作ったトマトパスタがうまい

1年かけて作ったトマトパスタ

 1年かけて作ったトマトパスタがおいしかった。

 バジルを育てるのに、1年かかった。

 育ててみようと思い立ったのが遅すぎたのだ。

 芽が生えてきたところに、冬、到来。

 寒さに震えてしおれそうになるバジルに、アルミの保温シートをかぶせ、

「がんばれ、がんばれ」

 と、応援し続けた。

 願いは通じた。

 「福寿草が見頃です」なんてニュースを聞くようになったころ、急に元気を取り戻した。

 ってなわけで、パスタにして、いただいた。

 うまい。

収穫したバジル

 驚くほどうまい。

 新鮮なバジルというのは、こんなにも香りがいいものなのか。

 都会で生まれ育ったせいだろう。私は、東京の空気を無色透明に感じる。

 故郷の空気は、匂いを感じないのだ。

 窓を開け、部屋に風を取り込む。

 空はかすんでいて、PM2.5が飛んでいそうな気がする。

 けれど、それでも、今日の風は気持ちがいい。

 わたしは、トマトパスタを食べた。

 うまい。

育ててたバジル
こんな感じで育ってます

 まるで、森にぽつんとあるカフェの味なのである。

 「これなら、わたし、店開ける」と確信した。

 時間をかけた料理はうまい。

 「それは、そうですけどもー、

 バジルを育てるのに1年かける意味なんてないでしょ?」

 そう思うかもしれない。

 ある意味、正しい。

 化学分析的には、なんの差もないかもしれない。

 しかし、違うのだ。

 絶対に違うのだ。

 ともに超えた冬の時代。

 その思い出こそが、重要なのだ。

 はじめるのが遅かった?

 そんなことはない。

 何にしても、遅すぎるということはない。

 遅ければ、少し苦労はするかもしれない。

 若い人ほど、簡単には覚えられないかもしれない。

 けれども、その苦労こそが、あなたを形作る大事な要素となるのだ。

 バジルだって、そうだ。

 いま、ここで味わえる、この最高のさわやかさは、時間をかけたからこそなのである。

 わたしは、このネタを、だいぶ寝かせた。

 お気づきでしょうが、バジルが再び生えてきたのは2月。

 パスタにしたのは5月の連休のころだった気がする。

 で、いま、7月。

 だいぶ面白くなってるはず。

 ワッホイ、ワッホイ。


 ※つまり、夏休みの宿題は10月頃やるとおいしいと思うよ。