ショスタコーヴィチについて、知ってはいけないことを知ってしまった気がしてモヤモヤしてる

 この数週間、非常にモヤモヤしております。ソ連の大作曲家、ショスタコーヴィチに関する、極秘情報を知ってしまったような気がするからです。もう、この数週間、ダスビダーニャ(ショスタコーヴィチの曲しか演奏しないという、熱すぎるアマチュアオーケストラ団体)関係者と顔を合わせるたびに、内心ドキドキ。わ、私が秘密を知っていると知られたら、、、殺されてしまう……。そんな思いで暮らしていました。

 とはいえ、調べてみたらWikipediaにも書いてある程度の極秘情報だったので、勇気をもって告白します。

ショスタコーヴィチとは、どんな作曲家か

 ショスタコーヴィチ(1906-75)は、ソ連時代のロシアの作曲家。社会主義において多くの芸術家が亡命したなか、共産党員としてソ連内で活躍した作曲家である。彼の交響曲は、まさにソ連の歴史を映し出したものと言える。

 しかし、その曲は表面上はソ連をたたえたものでありながら、痛烈なスターリン批判が込められている。社会主義の圧政のなか、言えなかった思いが音楽に込められているのである。

 こんな感じの作曲家です。

偽書っておもしろいよね

 突然、話を変えますが、私は偽書が好きです。偽書が好きってのも変な話ですが、オカルトと呼ばれる話のネタ元は偽書であることが多いんです。フリーメイソン陰謀論とかも、偽書が発端です。偽書って「ウソだって言われたって、そんなこと信じたくない!」って思えるくらいに人の心をつかみます。そんなわけで「世界を動かした「偽書」の歴史」という本を見つけました。

 

 いやいやいやいやいや。これ、読んでたら、『ショスタコーヴィチの証言』っていう本が、偽書だって書いてあるんですよ。「痛烈なスターリン批判が込められている」って、先ほどショスタコーヴィチについて解説いたしましたが、この話のネタ元は、『ショスタコーヴィチの証言』 だそうです。

ショスタコーヴィチの証言 裏表紙
ショスタコーヴィチの証言……買っちゃったよ

『ショスタコーヴィチの証言』とは

 『ショスタコーヴィチの証言』はどんな本かというと、著者はソロモン・ヴォルコフ。ショスタコーヴィチに「自分が死んだ後に、ソ連国外で発表して欲しい」と頼まれていた証言を、彼の死後、1979年にアメリカで出版しました。ソ連の中では、とても言えない内情を明かしています。

 出版後、大反響。それまでの音楽解釈が180度変わっちゃうわけです。まあ、話がおもしろいんですよ。時代は冷戦真っ只中。忠実な共産党員だと思われてた人が、実は心の中ではスターリンに批判的だったとか、熱いじゃないですか。西側の人は特に、本当であってほしいって思っちゃう。

 しかし、いろいろあやしいところもあって、偽書疑惑登場。『ショスタコーヴィチの証言』の訳者あとがき読んだら「偽書疑惑はソ連の陰謀」みたいなことまで書いてある。なんだけど、

 ウソなんだってよー!

 とはいえ、「ウソだ」と言いきれる決定打がないのも偽書の特徴です。だから、まあ、本当にウソか本当かわからないんですけど、ここはっきり書くと、なんか、いろいろ怖いので、はっきり言いますけど、だから、まあ、本当じゃない可能性が多分にあるかもしれないわけですよ。

 めでたし、めでたし。

 いやいやいやいやいやいやいやいや。めでたくないんです。ソ連政府に対する批判が込められてたって話、よく聞くんですよ。いろんな演奏会のプログラムの解説やら、CDの解説やらでよく見るんですよ。古いCDなら仕方ない。しかし、最近のプロの演奏会のプログラムでも見た気がするし、偽書だって言ってる人クラシックジャーナルの人ですよ?業界が知らないわけないと思うんだけど、やばいよー。こんなこと言ったら、世界がひっくり返るよー。

プロのオーケストラの解説を見てみた

 世界がひっくり返ってしまうのでは…と、不安になったので、おそるおそる、プロのオーケストラの曲目解説を確かめてみました。CDの解説ですが、2015年録音の結構新しいヤツで見つけました。

血の日曜日事件と関連付けて、ショスタコーヴィチがソ連政府への抗議としてこの交響曲を作曲したのではないか、とする解釈もあるが、それを裏付ける確たる証拠はない。

交響曲第11番のとある解説

 確たる証拠はない……( ゚Д゚)

 この長い人生、その言葉を見落としてました。「確たる証拠はない」ね……。国会答弁のようなその響き。そう、偉い人は言った。「行間を読め」。それだな。


 クラシック関係じゃない本を読んでて、急にクラシック音楽の話題が出てくると、ムフフってなります。先日、時計の本読んでてハイドンの話が出てきたんですよ。シンデレラは時間に遅れると罰を受けるという話、これは時計がないと有り得ない話なわけで、この価値観はいつ生まれたんだ?みたいなところから、ハイドンに至る。これも、なかなか熱いのです。その話はまた今度。

 ワッホイ、ワッホイ。