フジパンに電話したら民話が聞けた

フジパンのぶどうパン

 フジパンのぶどうぱん、おいしいですよね。パッケージの裏面を見たら、

フジパンぶどうぱんの裏
コールセンターかと思ったら、民話かよ

 民話が電話で聞ける!?

 謎すぎたので、電話してみました。

秋田の民話「めくら姉妹」が聞けた

 電話をしてみたら、自動音声が流れました。まあ、リカちゃん電話みたいなものです。全国に電話番号がありますが、どこにかけても同じ民話が流れます。

 今回のお話は「めくら姉妹」。

 だそうです。今回というくらいですから、定期的に入れ替わっているのでしょう。3分弱のお話でした。しかしまあ、方言がガチ。「これもむかしのことだどまって、むがし……」とか話始めるから、んぁんんんぁぁぁん???ってなっちゃて、3回くらい聞きなおしました。

 聞き取り間違いもありそうな気がしますが、どんな話だったのか漫画で説明しましょう。

めくら姉妹1ページ目
めくら姉妹2ページ目
バレたか!じゃねーよ

 なんなんだ、この話はーーーー!

 この話の教訓は「目が見えない人だって、感じる力は強いんですよ」「からかおったって、そうはいきませんよ」みたいなことらしいです。だがしかし、このサービスがフジパンの売り上げに貢献する理由がわからない。いったいどういうことなんだ。フジパン。なぜ、あなたは民話を収集しているのだ。

民話にはすごい背景があることがある

 とはいえ、民話をバカにしてはいけません。民話は伝承する間に言いたいことが分からなくなっていることがありますが、見方を変えると恐ろしい事実が浮かび上がることがあります。

 たとえば、ヘンゼルとグレーテル

 ヘンゼルとグレーテルは、なぜ、森をさまよっていたのか。あれは、口減らしのために捨てられたのだと言われています。そして、二人はお菓子の家を見つけ、魔女に捉えられ、魔女を殺して、財宝を持って帰ってきて、家に帰ってきます。

 当時、森には本当に魔女がいました。魔女狩りがあった時代です。魔女疑惑をかけられるような女性は、ひっそりで森で暮らしていることもありました。そういう女性が、捨てられた二人を助けたのです。

 ところが、子供二人は魔女を殺してしまいます。で、魔女の財産を盗んで持って帰って、「これだけお金あるんだから、家に置いてよ」と親と交渉するのです。

 親の立場になってみましょう。捨てたはずの子どもが、財宝持って帰ってきた。どうしたのか聞いたら、子どもは「魔女だから殺した」と答えます。当時、魔女は殺していい存在かもしれません。だからと言って……子どもが…。まあ、そんな事件があったら、怖いよねってなって、うわさになって民話化するでしょう。

 民話はそういう解釈もできるんですね。だからね、フジパンの民話にも、何か隠された秘密があるんじゃないかと思うんです。

三つの謎

なぜ、5人姉妹全員が盲目なのか

 そもそも、今回の民話。あまりに設定が厳しくないですか。親を亡くした、全員盲目の5人姉妹って不幸すぎる。原因は何でしょう?一家そろって、なんらかの病気をわずらったなどが考えられます。

 調べてみると、大地主が生まれるのは明治時代、1873年の地租改正からなんだそう。テレビドラマ『おしん 』 の時代ですね。大地主が小作に土地を貸して、できた作物の一部を地主に払うという、あれです。東北の小作はめちゃくちゃまずかったでしょう。栄養不良で失明に至る可能性はあるようです。栄養が不足しているところに、なんらかの感染症を患ったのかもしれません。

なぜ、からかうような真似をしたのか

 大地主は姉妹を自宅に呼び、お膳を用意します。一見いい人のようですが、なぜかいたずらをする。「好きなところにお座り」とか言いつつ、 お膳に乗る団子の数は全部違う。目が見えないから、違いに気づかないだろうとたくらむのです。

 これは深い謎です。大地主はいったい何がしたかったのかと。本当にからかいたいなら、「団子だよ」と言いつつワサビ置いておくとか、もっとやれることあるだろ。と言いたくなります。

 さて、『おしん』を思い出してみましょう。家が貧しくて、貧しくて、おしんは7歳にして奉公に出ます。そう、当時、貧しい小作はどうしていたか。奉公に出ていた。

 ところが、この5人姉妹は目が見えない。奉公先も見つけにくいでしょう。そこで、仕組まれたのが、この団子茶番だったと考えてはいかがでしょう。

なぜ、娘たちは隠語で確かめ合ったのか

 団子の数が違うぞと気づいた娘たち。普通に「何個だった?」って聞けよって話です。「田んぼのカカシは人作った(ひとつ食った)」なんて、暗号めいた会話をするのはどういうことか。

 ズバリ、頭の良さをアピールするため、です。

 大地主さんがですよ、5人姉妹の生活を心配して奉公先を探すわけですよ。取次人は「目が見えないんじゃ、取次できませんよ」という、そこで大地主が「いやいや、こういうことがあってだね」と団子の話をする。「目が見えないからって、バカにしちゃいけないよ。あの子たちはこんなに賢いんでさー」と大地主。

 取次屋は「へー、そりゃ凄いっすな」っていって、その話を奉公先にする。そして、その話が民話化した。

 こう考えると、つじつまが合いそうです。


 どーでしょう!!?!適当に考えた割りには、説得力のある結論になったと自負しています。民話の謎を考え始めた当初は、「地主がフジパン工場誘致のために一家を毒殺した説」とか推理していて、出口なくて迷宮入りしそうでした。なんとなくまとまってスッキリ。

 ワッホイ、ワッホイ。