どうしてコーヒールンバには「アラブのお坊さん」が出てくるの?→コーヒーはイスラム教の飲み物だった

コーヒー

 コーヒーといえばブラジルじゃないですか。なのにどうして“アラビアコーヒー”が有名なのか、コーヒールンバの歌い出しは、なぜ「むかし、アラブの偉いお坊さん」なのでしょうか。
 関口一郎氏の『新装 煙草と珈琲―その伝搬史』を読んだら、その理由がわかったのです。コーヒールンバの歌詞のいいところと、メチャクチャなところを説明しましょう。

コーヒーの原産地はエチオピア

 世界で最初にコーヒーを飲んだのはカルディさんと言われています(諸説あります)。カルディさんはヤギの放畜をしていました。エチオピア・アディスアベバ付近で、ヤギさんが真っ赤な果実をむさぼり食べていました。すると、ヤギさんは奇妙な鳴き声をあげ、はしゃぎだし、愉快そうに跳ね回りました。それを見ていたカルディさん。自分も食べてみました。すると、次第に気分が爽快に。なんともいえない良い気分になりました。

イエメンで栽培されるようになる

 紀元前13世紀ころイエメンに移植され栽培されるようになります。イエメンはサウジアラビアの南、アラビア半島にあります。イスラム教を布教するお坊さんが、はげしい宗教的修行の祈祷と瞑想に耽るときに睡魔におそわれないようにと、疲労を癒すために食べたことから広がっていきました。次第に薬として認められ、お坊さんが聖薬として、信者にありがたげに渡すという使い方がされるようになります。ちなみに、“モカ”はイエメンにある港の名前。コーヒーが最初に栽培されたのはアラビアだったのです。

 ですので、コーヒールンバの歌詞で「アラブのえらいお坊さんが、恋を忘れた男にコーヒーを教えたら、ウキウキになって恋をした」というのは、歴史的事実にそっていると言えます。しかし、しかしですね、この時代、コーヒーは赤い実をそのまま食べています。現在のような、豆を煎って挽いてドリップという飲み方はしていません。「お坊さんが、こはく色した飲み物を教えてあげた」のは、少々違っていることになります。

いつからコーヒーは飲み物になったのか

 イスラム教の間でコーヒーは流行しました。イスラム帝国の拡大とともに生の実の輸送が困難になっていきます。そこで乾燥させたコーヒーが出回るようになりました。
 ペルシア人たちが乾燥コーヒーを煮出した液を飲むという方法を考案します。煮出しているときに、たまたま水が少なくなったことがあったのでしょう。まあ、いい香りがしてくるではないですか。この発見から、コーヒーを煎ってから煮出すようになりました。
 十字軍によりヨーロッパに伝わります。当初、ヨーロッパ人はイスラム教徒の飲み物だからと飲んでいませんでした。ところが、ローマ教皇が飲んでみたら「こりゃうまい。」と言ったそうで、1605年ローマ法王クレメント8世が「余が自らこの飲み物に洗礼を施し、今日からキリスト教徒の飲み物にしようぞ」とキリスト教徒も飲めるようになりました。

どうしてコーヒーといえばブラジルなの?

 17世紀初頭まで、コーヒーの栽培はアラビア地方に限られていました。苗木や種子の持ち出しが禁止されていたためです。ところが、インドの回教僧ババ・ボーデンが7個の種子を盗み持ち帰り、インドのマラバールやセイロン島で育てるようになります。1700年頃オランダがインド産のコーヒーをジャワに移植。1706年頃ジャワの苗木をアムステルダムの植物園で栽培。ルイ14世にも献上されました。こうして各国が植民地での栽培を試み、1735年ポルトガルがブラジルに試植を始めます。1760年インドのゴアから樹を試植。1774年にリオデジャネイロに珈琲企業の本部を設立しました。
 ブラジルがコーヒーの名産地となのは、このためです。

コーヒールンバを正しくしたい

 ルンバって、ラテンアメリカだよね。というのが、混乱の元だったのです。「アラブのお坊さん」が冒頭に出てくるのに、サビでは「コンガ マラカス 楽しいルンバのリズム」と南米なわけです。
 WikiPediaによると、コンガはキューバの楽器、マラカスはスペイン圏(ブラジルでは使わないらしい)、ルンバはキューバ発祥だそうです。なんだか出てくるものが、いろいろなものばかりで、時代も場所も取っ散らかっています。歌詞自体は妖艶で素晴らしいと思うのですが、社会科の勉強に邪魔な部分が多すぎます。
 ちなみに、コーヒールンバの原曲はベネズエラだそうです。日本語の歌詞は原曲とはだいぶ違っています。

 これらを踏まえ、歴史に忠実な歌詞を作ってみたい!

コーヒールンバ
昔 アラブの偉いお坊さんが
恋を忘れた あわれな男に
しびれるような ヤバさいっぱいの
赤色をした果物を教えてあげました
やがて心うきうき とっても不思議このムード
たちまち男は若い娘に恋をした
ウード ダルブッカ 楽しいフォックスのリズム
南の国の情熱のアロマ
それは素敵な果物 コーヒーモカマタリ
みんな陽気に踊ろう 愛のコーヒールンバ

 うーん。ごめん。イエメンの音楽って調べてみたけど、全然わからないっ!原曲に忠実な訳詞書いてあるサイトのリンクを張っておきます!
 ワッホイ、ワッホイ